唐桑・賀茂神社さんのお祭り


今日は唐桑町大沢鎮座、賀茂神社(小原真朝彦宮司)さんの宵宮で、神楽を奉納しに米倉禰宜
と共に行って参りました。同神社及び鎮座地区は津波で甚大な被害が出ました。同神社も手摺が
破損していたり、危険箇所が多くある為、通常夜に行われていた宵宮祭や神楽奉納は午後3時か
ら行われました。
ガソリンが無かった被災後間もなく、オフロードバイクを駆って同神社や氏子地域の確認に行った時
は愕然としました。氏子地区は壊滅。ワゴン車が社殿に突っ込み、昨年10月に竣工したばかりの贅
を尽くした社務所は流失こそ免れたものの凄まじい荒れ模様。宮司さんやご家族の安否が気になりま
した。それから暫くして消防車が当社に来たと思ったら、降りてきたのが消防団服の小原宮司さんでし
た。行方不明者捜索の陣頭指揮を執っていたそうです。思わず両手を強く握り、言葉が出なかった。
本当に昨日の事のようです。
あれから早8ヶ月経とうとする今、社務所や社殿も復旧が幾分進み、無事お祭りが出来たことは本当
に感慨深いものがあります。青年部の方々や氏子の方々が、時に避難所から、時に仮設住宅から合
間を見て寄り合い、神社の復旧に尽力されたそうです。夜になると周囲に明かりも無く、目を凝らせば
打ち上げられた漁船や家の基礎などが見えるのみ、静寂の闇です。氏神様を囲むように在った賑やか
な町並みを懐古し、また以前のお祭りの光景が蘇ることを信じて・・・今日は神楽の本年舞い納めです。
神社は鴨居以上まで水が上がりましたが、建具が水圧で流され、縁の下も通水が良かったのか、流失を
免れました。太い柱のみで大きな屋根を支える。一見地震には不利に見える、壁が殆んど無い神社建築
の特徴が、流失被害を免れた要因のように思われます。しかし床は床板が下から波で叩かれ、床が無い
に等しい状態でした。
つい先日真新しい畳が敷かれました。畳が入っただけでも見違えるほどですし、これで祭儀も行えるでしょう。
お神楽が終わる頃には日は暮れていました。右の写真は流された車が追突した際折れた鴨居です。
聞けばその車には命があったそうです・・・。それを助けに行こうとする宮司さん、無理だ、あんたまで
呑まれてしまう。極限状態、極限のやり取りがあったそうです・・・。ご冥福を祈るのみです。
建具には園芸用のラティスが応急的に用いられ、ビニールが張られています。氏子さんが作業をして
くれたようです。遠くから見ると格子戸に見えないでもありません。この様に多くの知恵で、今も応急を
凌いでいます。
境内から十数メートル流された1t以上はあろうと思われる石碑です。「地震があったら津波の用心」。
度重なる津波の被害を被ってきた三陸、先人たちからの警鐘です。
津波の恐ろしさは分かっていたと思います。でも今回の津波はその理解をはるかに超えるものでした。